オジサンです。
最近は専業デビューに向けた心構え的な記事が続いていましたが、久しぶりに銘柄の分析の記事を書きます。
(オジサンは投資顧問ではないので、銘柄推奨ではなく個人の感想と捉えて下さいw)
今回取り扱うのはクラウドワークス。
会社の詳しい説明は省略しますが、雇用外で副業や仕事をしたい会社員やフリーランスとクライアントをマッチングするプラットフォームを運営している会社です。
昨今の人手不足問題、働き方改革といった社会情勢に乗って急激に業績(売上)を伸ばしている会社となります。
売上は伸ばしているのですが、創業以来営業赤字が続いている会社です。
クラウドワークスへの投資を検討する上で、まずは彼らのビジネスモデルと赤字の意味を理解する必要があります。
プラットフォームビジネスモデルは先行投資が命!
プラットフォームビジネスモデルというものがあります。
分かりやすい例はヤフオクでしょう。
ヤフオクは出品者と落札者がマッチングする場(プラットフォーム)を提供しているだけで、彼らが物品を直接販売しているわけではありません。
プラットフォームを使っている利用者から手数料を取ったり、バナー広告収入などから利益を上げるビジネスモデルとなります。
プラットフォームビジネスというのはシェアが重要なことから先行投資がポイントになるビジネスモデルと言えます。
これもオークションプラットフォームを例に出しますが、ヤフオクと楽天オークションが分かりやすいと思います。
たぶんヤフオクと楽天オークションは機能的には大差ないのだと思いますが、シェアは圧倒的にヤフオクが高いのは何故でしょうか?
ヤフオクの方がグルグルを早く回した
下記の図を見て下さい。
プラットフォームビジネスモデルの必勝方程式のグルグルを表現したものです。
オークションにおいて出品者が増えるとユーザー(落札者)が増えることになります。
ユーザーが増えれば、そこに出品したいと思う人がさらに増えます。
このグルグルの好循環を楽天よりヤフオクの方が早く回したと言えるでしょう。
ある程度シェアの差が付いてくると、出品者はわざわざユーザーが少ない楽天オークションを使わなくなります。
ユーザーの方も出品数が少ないプラットフォームは使わなくなります。
また、出品者にもユーザーにも評価というスコアがあるので、優良な取引をヤフオクで繰り返してスコアが高い人はますます楽天を使う理由がなくなります。
グルグルをなるべく早く回すには、広告などのプロモーションであったり、使いやすくするための機能開発が必要になります。
圧倒的なシェアを確保するまでは多少赤字が出ようとも先行投資によってグルグルを早く回す方に注力した方が良いのです。(利益は後から付いてくる!)
今回はヤフオクと楽天の例で説明しましたが、クラウドワークスも同じことを行っている最中です。
株主としては、売上さえ伸びていれば先行投資による赤字はほとんど気にする必要がありません!
余談ですが、同じようなプラットフォームビジネスモデルの会社としてAmazonだったりロコンドだったりがあります。(いずれも赤字先行のビジネスモデル)
クラウドワークスの業績の進捗から上方修正の可能性を探る
決算説明会の資料からクラウドワークスの売上の推移を確認してみましょう。
こちらは2016年からの売上を四半期ごとに表示した積み上げ棒グラフになります。
まず目立つことは毎四半期ごとにほぼ一貫して売上が伸びているということです。
(途中で子会社の買収があったのですが、そこを差し引いても増加傾向)
さらに4Qが繁忙期であることが分かります。
年末の予算消化や人材需要の特需が影響していると考えられます。
尚、現在の会社予想通期売上に対する2Qの進捗率は49.5%となります。
僅かに進捗50%を超えていないのですが、毎四半期売上が伸びる傾向であるのと、なんと言っても繁忙期である4Qを残しています。
大きな事故がなければ、ほぼ確実に会社予想の通期売上を超えてくると思いますし、早ければ3Q決算あたりで上方修正が出るかもしれません。
念を入れて以下の図も出しておきますが、1子会社のデータとはいえ3Qも順調に業績が伸びているようですね。
営業利益も通期で黒転の可能性が極めて高い
最初の章でクラウドワークスの場合は赤字でも気にするなと書きましたが、営業利益についてもチェックしておきましょう。(短期的な株価には結構影響しますし)
まず、営業利益というのは「売上ー費用」という単純な計算式で求められます。
売上については先ほど述べた通り、上方修正レベルで伸びていくと思います。
販管費の部分になりますが、費用については以下の図を見てください。
これは売上に占める費用の割合をグラフにしたものです。
売上の上昇に伴って費用自体は増えているのですが比率は下がっています。
こういう図を決算資料に出す時点で相当イケてるのですが、非常に効率を意識した良い経営が出来ています。
尚、2Q累計の時点で営業利益は37百万円の黒字でしたが、通期の会社予想は±0百万円となっています。
売上は伸びそうですし、費用もしっかりと抑えられているので営業利益の面でも通期の上方修正の可能性が極めて高いと個人的には考えています!
一応、売上や営業利益などの数値と進捗率がまとまった決算資料のスライドも示しておきます。
このスライドで気になる文言がありますね。
「連結範囲拡大に伴う~」
この部分については次の章で解説します。
連結範囲の拡大による特別利益が出る可能性がある
※この章についてはオジサンは会計の専門家ではありませんの一部不正確な内容が混ざっている可能性がありますのでご注意ください(多分大丈夫ですが)
ネット上ではそこまで話題になっていませんでしたが、クラウドワークスでは2018年6月13日に「連結納税制度の適用申請に関するお知らせ」というIRを出しています。
これがジワジワ効いてくるんじゃないかな~って思っていますw
そもそも赤字の会社は法人税を払う必要がない
当たり前の話ではありますが、黒字の会社は利益に応じて法人税を払います※が、赤字の会社はほとんど払う必要がありません。
※黒字の会社でも過年度の損失繰越による相殺で法人税が不要になる場合もあります
確定分で損失が出た年に税金が発生しないのは株でも同じですよね。
ではクラウドワークスの1Qの決算短信の損益計算書を見てみましょう。
クラウドワークスの1Qは赤字でした。
これを見て頂くと分かりますが、税金がかかる前の利益が△6,597千円の赤字なのに何故か法人税が15,143千円もかかっています。
クラウドワークスは赤字だったのになぜ多くの法人税が発生したのでしょうか?
クラウドワークスは連結納税制度を適用していなかった
クラウドワークスにはたくさんの子会社群があります。
創業以来赤字ということでしたが、子会社群を合わせた連結決算として赤字だったということです。
実際には黒字の子会社もあったのです。
クラウドワークスは連結納税制度を適用していなかったので税金の支払いとしては下記図のようなイメージとなります。(あくまでも例です)
つまり、発表していた連結の決算は赤字なのだが結構黒字の子会社も混じっているため個別に法人税が発生していたと考えられます。
これからクラウドワークスに連結納税制度が適用されると、法人税などが計算される数字が連結決算の数値となります。
従って、黒字の子会社があっても別の赤字の子会社分と相殺できるため法人税などの支払いが軽減されることが想定されます。(税金の支払いを将来に後ずれできる)
クラウドワークスは赤字の割にそこそこ法人税を払っていたので、連結納税制度が適応されれば無視できないくらいの水準で純利益に対してプラスの効果が見込まれると思います。
その辺りのことは6月13日のIR資料にも示唆されていますね~
このIR資料にも書かれている通り、連結納税制度が適用されるのは来期からなので法人税が軽減されるのは来期となりそうです。
しかし、この資料の後半にこんなことが書いてあります↓
「今期業績にも税効果会計を通じて影響が生じる予定ですが、その影響額については現在精査中であります。今後、連結納税制度適用の影響による業績予想の修正が必要となりましたら、速やかに開示いたします。」
これは一体どういうことでしょうか??
今期に繰り延べ税金資産が計上される可能性がある
先ほどのIR資料の後半ですが、オジサンの考えでは今期中に繰り延べ税金資産が計上されるのではないかと予想しています。
■繰り延べ税金資産とは何でしょうか
株も同じですが、事業の損失は翌年以降に繰り越すことができます。
尚、株の場合は3年までですが、事業所得の損失については9年間まで繰り越すことが認められています。
例えば、ある年に100万円の損失を出して繰り越したとします。
次の年に100万円の利益が出れば本来税金がかかりますが、前年の損失と相殺すれば無税となります。
計算しやすいように、法人税が30%だとしましょう。
損失の繰り越しが100万円あるとしたら、将来の利益相殺で税金が30万円戻ってくる権利を持っていると言い換えることができます。
これは資産(繰り延べ税金資産)として計上することが認められています。
注意したいのは、いくら繰り越しの損失が100万円あるとしても、将来的に黒字になる見込みがなければ繰り延べ税金資産としては認められません。
クラウドワークスは創業以来赤字でしたので、かなりの累積損失繰り越しが貯まっているはずです。(おそらく数十億円)
これまでは黒字になる時期がまだ先と見られていたので繰り延べ税金資産には認められていませんでしたが、最初の方の章で書いた通り今期中に黒転する可能性が高いです。
その辺りを見込んで、IRに「今期業績にも税効果会計を通じて影響が生じる予定」と書かれているのでしょう。
オジサンの読みが正しければ、今期中に繰り延べ税金資産の計上の特別利益のIRが出るかもしれません。
またその額によって、来期以降の黒字幅の見込みも少し想定できるかもしれません。
そもそも来期以降も赤字想定あれば繰り延べ税金資産として認められません。
IRに書いてあることを逆手に考えると、今期は黒転して来期以降も黒字継続になると会社が示唆しているとも言えるかもしれません。
ただし、繰り延べ税金資産は会計上の利益なので直接お金が入ってくるわけではありません。
ただし、ずっと赤字だった会社の純利益をお化粧するには十分のインパクトになるのではないかなと・・・
クラウドワークスは中長期投資向きの会社
最初に述べた通りクラウドワークスはプラットフォームビジネスモデルであり、今期から黒転するとしてもまだまだ先行投資のフェーズになります。
従って、ゲーセクみたいに短期勝負というよりはじっくり腰を据えて中長期で投資したい会社かなと個人的には考えています。
業績のしっかりとした伸びが一番の魅力ですが、フィンテックなどの新しい分野にも挑戦しているため材料も豊富かなとは思います。
最近は値動きが激しめの銘柄になってしまったのですが、オジサンが最も注目している銘柄の1つとなります!
オジサンはツイッターもやってますので宜しければフォローをお願いしますm(__)m
はじめまして!自分もクラウドワークスを分析しているので興味深く読ませていただきました。気になる点がいくつかあるので、質問させてください。
・営業利益がずっと赤字で、それを補うために借金を続けているようですが、先行投資とはこういうものなのでしょうか。H30上期だけでも4.75億円の短期借入と4.8億円の社債を発行しています(何の事業に使うかご存知ですか)。
・今期2Q時点で売上高32億円に対し、売掛金9億円ですがこの比率は普通ですか。
お時間がありましたら教えていただけると幸いです。宜しくお願いします。
コメントをありがとうございます!
>営業利益がずっと赤字で、それを補うために借金を続けているようですが、先行投資とはこういうものなのでしょうか。
⇒CWの場合は問題ないと思います。
そもそもCWの場合、先行投資をやめれば半期で2.9億円の利益創出が可能と書いてあります(Q2資料P11)
敢えて、先行投資をして赤字にしているということです。
先行投資のお手本はUSのAmazonですが、初期の頃に利益は全部先行投資に回すと投資家に宣言しながら拡大していきました。(今は利益が出ている)
CWも目先の利益より先に売り上げの拡大を優先しているということです。
なので、赤字を補うために借金をするというよりは先行投資のために借金をしていると言ってよいでしょう。
ちなみに先行投資とは、M&A、人員強化、研究開発、広告宣伝などです。(Q2資料P10など)
そもそも、赤字を補うための運転資金としてという意味なら銀行はCWレベルの会社には貸してくれません。(しかも、無担保で借りています)
先行投資優先の会社の場合、営業利益よりEBITDAを見た方が良いです。
ちなみに、先行投資をしても売り上げが伸びなくなれば黄色信号です。
それが2四半期も続けば、私はCWから資金を全て引き揚げると思いますw
>H30上期だけでも4.75億円の短期借入と4.8億円の社債を発行しています(何の事業に使うかご存知ですか)。
⇒借り入れは電縁のM&AのためとIRから出ていました。
社債は知りませんが、主に運転資金・設備投資ではないでしょうか。
自己資本比率は約30%と普通の数字ですが、前述したように黒字に出来ないわけではないですし今のところは問題ないと思います。(さらに増資したので改善もするはず)
>今期2Q時点で売上高32億円に対し、売掛金9億円ですがこの比率は普通ですか。
⇒ここは全く問題ないと思います。
月商の1~2か月分くらいの売掛金は現金商売でなければ通常発生するレベルだと思います。
長々とした回答ですいません!
丁寧なご返信ありがとうございます!
色々と資料の見方まで教えてもらってすみません…
元々の利益は大きいのですね。
今後も投資を続けて新事業を増やすにしても、利益が増えるにしてもすごく楽しみな会社ですね^^